戦士と語る Vol 5

元東洋太平洋バンタム級チャンピオン
新田 渉世

Photo By Hiroaki Yamaguchi
打越昌弘
元日本フェザー級1位
TB20W17(11KO)L2D1


 ケビン、笹脇あっちゃん、高橋ナオトくんと着々とお友達が増えてきたぞ・・・
 この企画をダシに友達の輪を広げようという、オイラの野望も軌道に乗り始めた。
 そして今回は、高橋ナオトくんの紹介―

かつてナオトくん自身がグローブを交え、激闘を演じた元帝拳ジムのスラッガー打越昌弘(旧名=秀樹)さん。

打越さんはその試合中にアゴの骨を2ヶ所骨折し、口から吹き出す血を飲み込みながら戦い続けた猛者。現在は、ナオトくんのJBスポーツクラブでトレーナーとして活躍しています。

というわけで、前回に引き続き、またまたJBスポーツにお邪魔してしまいました。待ち合せの日、私よりすこし遅れて到着した打越さんの第1印象は

「コッ、コワイ・・・」

真っ黒に日焼けした筋骨たくましい肉体、短く刈った髪とするどい眼光。「これが血を飲み込みながら戦い続けた猛者か・・・」
ところが話してビックリ、話題豊富でよく喋る、スケベで人間味あふれるなんとも愉快なあんちゃんでした。

 ‘99年2月からJBスポーツでトレーナーをはじめた打越さん。リングで戦った者同士が今では友達という不思議な関係について「でもね、はっきり言って今でもすっげえ悔しいっすよ。」と本音をポロリ。そんな気持ち、すごぉ〜くよく解ります。
 最初は「高橋ナオトなんて大っ嫌いだった。」という打越さんでしたが、引退後、後楽園ホールで当時まだ現役だったナオトくんに、自分から声をかけたのがきっかけで、話をするようになったそうです。それからは試合の応援に駆けつけ、電話などでも時々話をするようになりました。

1968年1月14日、茨城県笠間市生れの32歳。早生れですが、笹脇あっちゃん、ナオトくんに続いてまた私と同級生。‘86年に帝拳ジムよりプロデビュー。初戦をKO勝ちで飾り、連勝街道をばく進しました。当時はさすがに天狗になってしまい、マネージャーの長野ハルさんに「あんたのために地球は回ってんじゃないのよ!」とお叱りをうけたことも−。
同じ帝拳ジム出身の大場政夫にあこがれ、大場の愛車だった純白のコルベットに純白のスーツを25歳で手に入れた期待のホープが、ハイウェイのスタンドにさっそうと乗り込んだ時のお話―
「ハイオク満タンね、あ、釣りはいいから・・・」(もう気分は最高)
「お帰りはどちらでございましょうかっ」(全従業員総出の見送り)
「あっち」(空を指差す)
「かしこまりましたっ」 
夢を実現するキーを回した打越あんちゃん。
キュルキュル、キュルキュル・・・あれ?・・・キュルキュル・・・
夢はレッカー車と共に寂しく運ばれていったのでした。

ナオトくんとの激闘の後、復帰戦からまた連勝を重ね、94年11月に日本タイトル挑戦が決定。ところが、その3カ月前の8月におこなわれた前哨戦が打越さんのラストファイトとなってしまいます。「思い出したくないくらい最悪の試合だった。」確かに体のキレがなく、会場もやたらとヤジが多い日でした。
その試合で、左右の目の下の骨を骨折。無惨な結果に終わってしまったのでした。眼球が半分落っこちた状態になってしまい、即入院。その才能を十分に開花させることなくグラブを置くこととなりました。

でも打越のあんちゃんは、また新たな夢に向かってはりきっています。
「自分で会社をやりたいんですよ!!」会社の名前だけはもう決まっている。“MKイベントプロモーション”Mは昌弘の、Kはひとつ下の愛妻−加奈子さんの頭文字だそうです。どういう訳だか、これまで語ってきた戦士達は皆スケベなくせに愛妻家なんだよな―。そういうのってありかなあ?と思ってしまうしょーちゃんでした。
 「一生懸命なヤツが好き」という打越あんちゃん。“MKプロモーション”でボクシングのプロモーターをやりたいらしいのです。「いい環境で、いいファイトマネーで試合をやらしてやりたい。日本のボクシングはもっと演出に金をかけるべきだ。東京の会場は後楽園ホールというこだわりも捨てるべきだ。」―そういう話になると急に眼光が鋭くなる。「コッ、コワイ・・・」

 場所を居酒屋にかえると、打越あんちゃんの独壇場となってしまいました。といっても話題は1から10までオンナの話。ここではふせておきますが、“天真爛漫なスケベ”“ロープ際のスラッガー”というキャッチフレーズをつけたいと思いますので、適当に想像してください。
 そして最後にしょーちゃんに向かってこう言いました。
 「物事ってのはねえ、自分の都合の良いように考えないとダメっすよ!これは人生の鉄則だよね!!」
 その辺の男が言ってるのとはちょっと違うんです。身を削って生きてきた男の言葉・・・。しょーちゃんはしっかりと受け止めさせてもらいました。
 ありがとう。打越あんちゃん!!

 JBスポーツの看板選手、前日本S・バンタム級チャンピオン−福島学選手の復帰戦が、12月2日におこなわれる予定です。まだ相手は未定ですが、「弱い相手とはやりたくない。」と、福島選手は燃えています。ファンの方は応援よろしくお願いします。

 フォトグラファー山口は、今回は打越あんちゃんのパワーに押されっぱなしでした。
 「お、おれはどっちかっていうと、ひとりに尽くすタイプですから・・・」



 



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